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Published 20 April 2011

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タイ、中国、ベトナムで象牙の大規模押収事件

【2011年4月20日】
4月中に3つの大規模な象牙の押収事件があった。このことからアフリカからアジアへ象牙を密輸する組織的犯罪シンジケートがターゲットとする市場について、さらに洞察を加えることができる。


中国メディアは、4月はじめに広西壮族自治区で700本以上の象牙を押収されたと報じた。

中国メディアが昨日報じたところによると、ベトナムとの国境まで数kmという中国の広西壮族自治区の幹線道路の料金所で、大型トラックの定期検査をおこなった際に、近年最大規模の量の象牙が発見された。押収されたのは707本という膨大な数の象牙と象牙のブレスレット32個、サイ類の角1本であった。

 4月1日にはタイ税関によって、247本の牙が押収されたばかりだったため、今回の押収事件が話題となっている。これらはケニアから来た冷凍魚の積送品に隠されていた。また、ベトナムのメディアが昨日報じたところによれば、警察がベトナムの北東部の港で、まさに中国との国境地点であるモンカイの倉庫から122本の象牙を押収したという。

 「すべての事件において、法執行当局がこれらを差し止めたことは称賛すべきだが、これら押収された牙は500頭以上のゾウの密猟があったことを証明しており、保全に対する重大な懸念である」とトラフィックで違法な象牙取引を専門としているトム・ミリケンは言う。

 「正式な確認を待ちつつも、この押収パターンは、いまだタイと中国がアフリカから密輸された大量の象牙の主な最終目的地であり、ベトナムが中国への主要な取引ルートの役目を果たしている、という私たちの疑念の裏付けとなる」とミリケンは言う。

 ミリケンは、ゾウやサイの取引に関する活動を指揮しており、ワシントン条約締約国に代わって「ゾウ取引情報システム(ETIS)」を管理し、象牙の違法取引を追跡している。

 ETISは、ゾウ製品の押収記録に関する世界最大のデータベースである。もっとも新しい分析では、タイを、ナイジェリアやコンゴ民主共和国と同様、世界規模の違法象牙取引に関わっている3国のひとつとしている。一方ベトナムは、中国向けとみられる違法な象牙積荷の主要な経由国のひとつだと特定されている。

 前回のETIS分析で、2004年から2009年の間に違法な象牙取引が段階的に著しく増加していることを示しているとして、トラフィックは警鐘を鳴らしている。しかし2009年以来、中国、タイ、ベトナムだけで20 t 近くの象牙が、ほとんど息つく間もなく押収されており、これら最近のものはまだ分析に反映されていない。

 「手慣れた犯罪ネットワークは、陸路、海路、空路とあらゆる手段で、アフリカの原産国から禁制品を、アジアのもうけの大きい市場に密輸している。またその際、しばしばみつからないよう遠回りのルートを使う」とミリケンは言う。

 「大きな押収、逮捕、起訴が、これら密輸事業に対する確かな抑止力ではあるものの、ゾウの密猟を削減する唯一の長期的な解決策は、違法に供給された象牙に対する需要を、無視できるほどの低いレベルまで減らすことだ 。」